2015年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

「大学との共同研究による自然科学研究者の育成と再生可能エネルギーの研究開発を通じた応用分野の研究者の育成」

実施担当者

佐々木 隆行

所属:山形西高等学校

実施担当者

小野 亮介

所属:山形西高等学校

概要

1.はじめに
 山形県立山形西高等学校では、「山西リケジョプロジェクト」と称して、次の項目を目標にさまざまな活動を展開しています。
1)理系進路選択の幅を広げる。
2)文理を問わず理科への興味関心を高め、科学技術に対する理解を深める。
3)理系分野で特異な能力を持つ生徒の能力を引き出す。

主な実施内容は次の3つです。
1)大学との連携
 研究室訪問や講義を受け、理系生徒の進路選択の幅の拡大と科学技術に対する理解を深める。研究設備を実際に見ることや最先端の科学に触れることを重視。
2)外部の科学講座との連携
 東北大学主催の「科学者の卵養成講座」などへの参加支援。
3)放課後実験クラブ
 運動部も参加できるよう、部活動としてではなく講座として実施。優れた研究は、外部の研究発表会や論文大会へ出品。月数回放課後あるいは長期休業時に実施。


2.放課後実験クラブについて
 放課後実験クラブは自由参加型で実施しており、基礎実験講座で様々な分野の実験の基本技術と科学的考え方を学びます。その中で、自分の研究テーマを見つけた生徒は、自由研究を行っています。学校側では、設備や実験材料について可能な限り援助しています。試薬や実験材料で高価なものは、平成25年度から27年度までは、(独)科学技術振興財団(JST)の「中高生の科学部活動振興プログラム」の支援を活用させていただきました。
 自由研究班は、物理・化学・生物の3分野で研究しています。物理分野は、発電素子の開発や発電システムの構築に取り組んでいます。化学分野は研究テーマを模索中です。生物分野は、両生類研究チームと動物行動学チームが現在活動しています。


3.公益財団法人中谷医工計測技術振興財団からの支援費の活用について
 放課後実験クラブでは、様々な分野の研究をしており、平成25年度から27年度までは、(独)科学技術振興財団からも支援を受けていましたが、主に生物分野の実験材料費と外部発表に予算を使っています。大学との連携も行っていますが、大学で研究できる時間は限られており、校内で研究する際の計測機器などの備品が不足しています。
 公益財団法人中谷医工計測技術振興財団からの支援費は、備品購入費用として活用させていただきました。初年度は、バイオ燃料開発の為のセンサー類と人工気象器を導入し、2年目は、サーモカメラと分光センサ、分光センサモニタ一式を導入しました。
 バイオ燃料関連の研究は、難航しており結果は出ていません。そのような中で、発電素子に興味を持った生徒が現れ、色素増感太陽電池の研究に着手しています。色素増感太陽電池については光のスペクトルにおいて、発電に全ての波長が活用されているわけではないことが知られていますが、紫外線領域や赤外線領域についてもエネルギーを有効活用可能な改良ができるように実験を繰り返しています。今後、素子のエネルギー変換ムラや光の吸収特性を調べるのにサーモカメラや分光センサを活用する予定です。
 また、動物行動班では、光に対する動物の行動を調べており、オカダンゴムシにおいて、光の種類により逃避行動の反応性に違いが生じることを確認しています。現在、分光センサを使い、光の波長と逃避行動の関係について分析をしています。この研究は12月に開催された山形県サイエンスフォーラム(山形県の理数科設置3校と化学部や有志で研究に取り組む生徒たちの研究成果発表会で平成27年度に初めて開催された)において生物部門優良賞を受賞しました。全体から選ばれる最優秀賞も生物分野の研究だったため、最優秀、優秀に次ぐ第3位に相当する賞ではありますが、最優秀賞と優秀賞に選ばれた生徒は2年生であるのに対し、動物行動班は1年生2人での発表で今後の進展に期待が持てる結果であったと思われます。全55テーマの発表のうち、1年生の発表グループは4テーマ(うち山形西高より2テーマ参加)でした。優良賞までは動物行動班以外は、他の研究領域においても全て2年生のグループであり、発表に参加した生徒は最優秀賞を取れなかった悔しさと同時に、受賞できたことで自分たちの研究に対して自信を深め、さらに他のグループの発表を聞いて大会終了後には「来年はもっと研究を進めて最優秀賞を受賞できるように頑張りたい」と決意を新たにしていました。このサイエンスフォーラムでは他校の生徒がiPadを片手にプレゼンテーションをわかりやすく展開しており、支援費で購入させていただいたiPad Proは実験計測のモニターとしてだけでなく、生徒の研究発表の機会においてはプレゼンテーションツールの一つとしても活用させていただく予定でいます。