2014年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

「回路カードで論理的思考力と創造性を育み、特別支援に配慮した理科授業」

実施担当者

神原 優一

所属:倉敷市立北中学校 教諭

概要

1.はじめに
 今回の申請では、大きく分けて3つのことを行った。1つ目は、電気の分野での、回路カードの実践。2つ目は、特別支援でのシングルエイジサイエンスの実践。3つ目は電子黒板の実践である。

2.回路カードの実践
 現在の電気の分野の教具(実験器具)の問題点としては、機材の関係上、班に1つするのが限界であり、配線をするにも時間もかかるため、こういう作業が得意な男子ばかりがやってしまい、苦手な意識をもった子(特に女子)は苦手なままである。
そこで、イラストレーションボードに銅テープを貼ったものを生徒に渡し回路を作るという回路カードをクラスの生徒一人ひとり全員に行った。
 普通クラスではもちろんのこと、特別支援(知的)のクラスの生徒にも行った。
 特別支援のクラスでも生徒一人ひとりが回路を作ることにより、きちんと筋道を立てて考え、回路をつくることができるようになった。また、自分で回路図から回路を組み立てたので、こちらが予想していなかった回路であったり、どこでつまずいてわからなくなったりしているのかが、一目でわかるので、とてもよい教材だった。
 この回路カードで完結するのではなく、と手回し発電機や電化製品などの回路カードの上にのらないようなものをクリップ留めで回路カードと合わせて使うことにより、銅テープと手回し発電機をつなぐ導線が同じ役割をしているということがスッと理解することができているようだった。
また、回路カードで使ったパーツを使って、直接つないで使ったりすることで、特別支援のクラスでは難しかった器具の配線なども容易に行うこともできた。
 電気(2年の分野)ということではあったが、まとめてエネルギー(3年の分野)の観点として手回し発電機で発電したものは、蓄電できることや、発電できるものは手回し発電機だけなく、ソーラーパネルなどにもつないで発電、蓄電し身のまわりの家電製品に使えるということも学習につなげた。
 この回路カードでは、簡単に全員が組み立てることができたので、普段は班で一個しか行うことのできない回路の組み立てがクラスにいる全員ができるので、とても楽しそうに行うことができていた。
 早くできた生徒は、まだできていない生徒に教えることができるので、生徒同士の協力が深まった。


3.シングルエイジサイエンス
特別支援(知的)のクラスでは、IQが低いだけでなく,手先が不器用である(微細運動障がい)生徒が多く、実験をするときにも難しいものも多い。そこで、今回は、小森栄治先生が提唱しているシングルエイジサイエンスを行った。シングルエイジサイエンスとは、幼稚園児(シングル(一桁)のエイジ(年齢))でも、大人が行っても楽しくできる理科のことである。
これも回路カードと同じで、一人ひとり全員が実験を行うことができるというのが魅力的である。このシングルエイジサイエンスには、様々な実験があり、ゴムを使ったロケットの実験、磁石を使った磁力の実験、BTBを使った色の変わる水の実験、糸を使った音の実験など、たくさんの実験を行うことができた。全員が行うことができるので、楽しく実験を行うことができた。
実験を行っただけでは、中学校の楽しいだけで終わるので、どうしてそうなるかの説明などもしっかり行い、火山の実験では、更に発展として、実物を使った岩石標本を作り、更に、その石を割ったり削ったりなどして、ルーペや顕微鏡でも観察を行った。
また、支援のクラスの授業の最初にはフラッシュカードとわくわくずかんを使っての植物や昆虫、体のつくり、星座などの名前や特徴を覚えた。途中から、生徒も自分で行いたいという気が出てきて、何回か生徒が生徒にフラッシュカードをするということもあった。
また、星座のフラッシュカードとわくわくずかんのフラッシュカードは2セット購入し、1セットは、理科室の壁の四方に星の部分に夜行シールを貼って掲示した。
3年の宇宙の分野では、この壁に貼った星座のフラッシュカードが予想以上に役に立った。


4.電子黒板ユニットを使った授業
 倉敷市の中学校では全ての通常クラスに、電子黒板が設置されているが、理科室を含む、特別教室では電子黒板は設置されていない。理科室でも電子黒板が使えるように設置し、授業を行った。今回は、エプソンの電子黒板ユニットを使った。この電子黒板ユニットの特徴としては、大きな設備が必要では無く、プロジェクターが使える環境さえあれば、持ち運びも容易で、簡単に設置できるのが大きな利点だった。また、電子黒板のペンは、ボタンがついており、プレゼンテーション用マウスと同じような効果としても使うことができた。
当たり前だが、モニターを黒板として使うことができたので、映した映像の上に生徒が、文字や絵を書くことができ、生徒は満足そうであった。

9.まとめ
 今回行った実践でわかったことは、特別支援の生徒も通常のクラスの生徒も、教師の助けは最低限で、自分でやりたいということである。そのための方策として、回路カード、シングルエイジサイエンス、電子黒板などはとても有効な手段であった。また、このような教材を使うことで、教師自身の準備の時間なども普通の実験よりも手間が少なくても、できることが今回のことからわかったので、これからも続けていきたい。