2016年[ 科学教育振興助成 ] 成果報告

「わたしたちの海について知ろう!学ぼう!体験しよう!」~各学年における海洋教育カリキュラムの作成および東京大学海洋アライアンスとの連携、授業実践を通して~

実施担当者

細貝 郁子

所属:台東区立忍岡小学校 教諭

実施担当者

鬼塚 信之

所属:台東区立忍岡小学校 教諭

概要

1 はじめに
本年度、中谷医エ計測技術振興財団の助成金を得て、全校で海について調べる活動を行うことができた。日本は、島国なので周りを海に囲まれている。きれいな海、汚い海、怖い海、自然観察や防災学習まで幅広く、今年は取り組んできた。ここにその報告の一部を述べたい。

2 海洋教育の活動

2-1 ニモのひみつ

国語の教科書の教材「めだか」を通して、魚のくらしや敵から身を守るための工夫などを学習し、魚についての興味?関心を深
めた。
次の単元「本で調べよう」では、図鑑やいろいろな本を活用しての調べ方を学んだ。
その後、「自分たちの調べたいことを調べよう」の学習では、教科書の例にも載っており、本校の玄関の海水魚の水槽にもいる「クマノミ」のことを調べた。それぞれで調べた内容を発表しあい、わかったことをクイズ形式で他の人に知らせた。調べたり
発表したりした後も、魚の生態や海に対する疑問などをもつことができ、興味?関心を深めた。
児童が調べたことをポスターにまとめ、2月に東京大学で行なわれた「東京大学海洋サミット」でポスターセッションを行なった。

2-2 海について調べよう!

東京大学から招いた専門家に赤潮が起きるメカニズムや赤潮の原因になるプランクトンの写真や図鑑を見ながら解説してもらった。夏休みに行った岩井臨海学園の時に、海の様子を観察したり、海の中にいるヤドカリや潮だまりにいる魚や貝などを捕まえたりして観察した。岩井臨海学園の帰りには総西臨海公園に立ち寄り、岩井の海の様子と葛西の海の様子を比較した。
学校に帰り、岩井の海と秘西の海で採取した海水の中にいるプランクトンを比較し観察した。また、学区域にある不忍池の水にはどのようなプランクトンがいるか、海のプランクトンと違いはあるかを調べた。
岩井と葛西の海は同じ東京湾ではあるが、都心に近い所と外洋に近い所の海の違いについて子供たちは、観察し学ぶことができた。
葛西臨海公園では、水族館にも立ち寄り、海の魚の様子について学んだ。
その後、今まで海について学習してきたことを振り返り、さらに追究したいことを課題に設定し、海流や赤潮、プランクトン、サンゴ、イソギンチヤクなど、海のことについて様々なテーマで調べ、調べたことを発表しあった。海から出発し環境を
守ることにつなげて考えた発表が多かった。

2-3 防災について考えよう

津波や地震発生のメカニズムについて、東京大学の専門科を招き学習を行った。津波の学習では、津波実験機を使うことで、地震によって津波が発生することや押し波、引き波があることなど、体験的に学習することができた。また、地震の学習では、地震が起きるメカニズムについてスポンジをプレートに見立てた教材を用い、スポンジを滑らせ、跳ね返ることで地震発生の仕組みを実験し理解することができた。さらに、自分が暮らす台東区の地形の様子を学び、災害が起きたとき、自分のよく行く場所や台東区の防災マップから、どのように身を守ればよいか、自分がとる行動について具体的に考えることができた。
まとめとして気仙沼の災害の様子や防災と台東区の防災の様子、関東大震災の被害やこれからの台東区の防災について、比較して考えることができた。

2-4 海に興味をもとう

学校玄関正面に淡水と海水の水槽を置き、海水の魚やサンゴ、イソギンチャクなど生物の様子観察することを通して海に興味をもつことができるようにし、また、淡水の魚や水草の様子を観察することを通して身近な不忍池にも興味をもつことができるようにした。魚や生物の名前を写真と合わせて表示し、ワークシートを常時設置して、児童が観察して気付いたことや疑問を常に記入できるようにしている。定期的に全校朝会や校内放送で児童の観察発見について全校に周知する。また、児童の疑問をまとめて東京大学の先生に質問し、回答を得る。
児童からのつぶやきとして、「イソギンチャクが移動していた。」「水槽の裏の部分を見たらサンゴの下の部分が赤かった。」「海水の魚の方がきれいな色だ。」「イソギンチャクの先が伸びたり丸まったりしていた。」「ドジョウが上にあがってきて空気を吸っていた。」「ドジョウは草や岩の間に隠れようとする。」などがあげられる。
海について興味を持ち、夏休みの自由研究や日ごろの自由課題の中で海の生き物について調べる児童が増えた。しかし、海水から身近な海へのイメージはすぐにつながったが、淡水から学校日の前の不忍池につながるイメージはもたせにくかった。不忍池を側で見ても透明度がよくないのでなかなかつながらなかったのだと考える。来年度の課題として考えていきたい。

2-5 地球温暖化について考えよう。(上野中学校と一緒に学ぶ)

近隣の上野中学校科学クラブと本校科学クラブによる合同活動。東京大学の研究室に出かけ、理学部茅根教授のお話を聞きなが
ら、実験や観察を行った。海水の酸性度を測定したり、サンゴの年輪や有孔虫を観察したりして、地球温暖化について考えることができた。
児童は実験や観察を通して、珊瑚礁など生物がこの地球を作っていることや、二酸化炭素が増えると海が酸性化してしまい、たくさんの生物に影響を与えてしまうことを肌で感じることができた。

3 まとめ

中谷医工計測技術振興財団の協力を得て、その助成金で津波実験機や電子顕微鏡など様々な実験器具を購入することができた。何よりも大きかったのは、実際の海をイメージした水槽を玄関に置くことによって、1年生から6年生の子供たちにとって、海水や淡水の中で生きる生き物のイメージが広がった。夏休みの自由研究や旅行先などでも海に触れてまとめや体験をしてくる児童が増えた。